【 中環廣場 (Central Plaza) 】
九龍からヴィクトリア湾沿いに臨む超高層ビル群、これは誰でも一度は目にした事のある景色だと思います。香港島を臨めば、島の西端から東にむかってビルが途切れる事はありません。これほどの景色の場所が、つい200年程前までは自然豊かだったなんて、全く信じられないですよね。
ヴィクトリア湾は年々埋め立てられ、どんどん縮小しています。イギリス統治時代、最初は人力の工事しか出来ず規模も小さかったものが、次第に重機を使うようになり、施設は巨大化し、埋立てのスピードもだんだん増していきました。今の香港は埋立てによって作られた、と言っても過言ではないのかも知れません。香港島では年数を重ねるにつれ北へ向かって埋立てが進められ、中環(Central)や灣仔(Wanchai)はもはや元の海岸線が分からなくなる位に埋め立てられてしまいました。中にはいっその事香港島と九龍半島を繋げてしまおう、という計画もあったようですが、元々ヴィクトリア湾が良港として開かれた街だけに、そんな事をしたら香港のある意味がなくなってしまう…ということになりその話はいつの間にか立ち消えとなったようです。
その中でも特に灣仔は面白い街です。香港島の山裾から海岸に向かって埋立てが行われているので、山から海に向かって年代別に、バウムクーヘンの様に街の層が折り重なっています。二階建ての路面電車の通る荘士敦道(Johnston Rd)を境として、山側は埋立て以前からある地域で、古いビルが多く、いわゆるショップハウスと呼ばれた建物を高層化したものが立ち並んでいます。やがて海側に進むにつれて建物は新しくなり、最後には超高層ビル群や香港会議展覧中心(Hong Kong Convention & Exhibition Centre)が出現して海岸線に辿り着きます。この超高層ビル群が建つ辺りは、灣仔の中でも香港の新都心として開発された地域で、街の層の中では最も新しく、建物の間隔も広く取られ、それまでの灣仔の街並みとは一味違うのが特徴です。
この埋立地の最も先端、高層ビル群のなかに中環廣場(Central Plaza)という超高層のオフィスビルが建っています。このビルは2003年、香港駅上に建設された国際金融中心・第二期(Two International Finantial Centre)が完成するまで香港で最も高く、完成時にはアジアでも最も高いビルでした。現在でも世界で9番目の高さを誇り、尖塔を含めると高さが374mにもなるため、見上げるのにも一苦労です。かなり首が痛くなるのですが、そこは忙しい香港、そんな事をしている人はあまりいないかも知れませんね。この建物の最上階には、世界で最も高い場所にある教会が設置されています。天空の教会とは、一体どの様な所なのでしょうか。
建物は上空から見ると三角形をしていて、側面には金色と銀色のハーフミラーの窓ガラスがはめ込まれています。ただでさえ亜熱帯気候で暑い香港、夏にはガラスの照り返しがきつく、この中環廣場もその例に漏れません。ただ中に入るテナントにとっては、金色で縁取られた華やかなビルに入るということは、益々の繁栄を望めるとの意味もあるのでしょう。香港では金色のハーフミラーガラスを多用した建物は良く見かけるのですが、中環廣場の金色度合いは香港のビルの中ではまだ抑えられている方だと思います。また、エントランスや主要部分には御影石や大理石をふんだんに使い、さすがに香港で当時一番高いビルとして設計された超高層ビルとしての風格が感じられます。
中環廣場は夜にはライトアップが施され、尖塔部分が光の時計になり15分に1回、色が変わって時間を知らせてくれるのです。九龍からヴィクトリア湾越しに、またスターフェリーの船上から見る中環廣場はもちろん綺麗なのですが、ビルの後ろにある灣仔の街から見る中環廣場も魅力的です。街中が活気ある市場の様な灣仔の街、その中から中環廣場を眺めると、今自分は躍動する都市にいるということが実感できるのではないでしょうか。何気無い光景ですが、それは日々繰り広げられる生活と建築とが、心地よく合わさっている瞬間でもあると思います。
【中環廣場 (Central Plaza)】
竣工:1992年
高さ:374.0m(含尖塔部分)
設計:デニス・ラウ&ン・チュン・マン(Dennis Lau & Ng Chung Man)
用途:オフィス
住所:香港、港灣道18(18 Harbour Rd, Hong Kong China)