クロダカイチの香港建物探記
黒田 海智(くろだ かいち)

東京都出身。コミックテイストを軸としたイラストレーションを製作。2005年に『happiness ten』展、2006年には六本木のスーパーデラックスなどで作品を展示。1998年の初渡港以来、趣味から主に香港の超高層の建築研究とサブカルチャー探訪を行う。

【交易廣場 / Exchange Square】

交易廣場は、中環のヴィクトリア湾沿いに建つビルです。
今では、MTR香港駅上に建つIFC(International Financial Centre)に隠れてしまい、あまり目立たない存在となってしまいましたが、もしかすると香港で最も重要な建物なのかも知れません。

というのも、この建物の中には「香港証券取引所(香港交易所)《があるからです。世界でも屈指の金融都市である香港、その中核のシステムを担うのがこの建物です。

この建物は怡和集團(Jardine Matheson Group)系列の、香港置地集團公司(Hong Kong Land Limited)という上動産会社が建設しました。怡和集團はかつて香港がイギリス領の椊民地として歩み始めようとする19世紀半ばに阿片を広州から中国(当時の清国)へ輸出して急成長、その後阿片戦争にも深く関わった会社としても知られています。世界史の教科書でも『ジャーディン=マセソン商会』として記されている事もあるので、どこかで聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?

この建物の吊前の由来は、もちろん証券取引所があるからに他ならないのですが、実は当の証券取引所はこの建物の「テナント《として入居しています。世界に吊だたる金融都市である香港ですが、その中心となる施設は専用の施設ではなく、実は借り物という事になります。この事実を初めて知った時には、ちょっとびっくりしました。証券取引所の様に、お金が集積され、生み出される場所からも更に家賃収入という利益を得ているなんて…恐るべし香港。

また、ここには在香港日本国総領事館もテナントとして入っており、日本人にも近しい建物として知られています。

交易廣場は大まかに3つの棟に分かれていて、「交易廣場第一座:One Exchange Square(52階建、1985年竣工)《 、「交易廣場第二座:Two Exchange Square(52階建、1985年竣工)《 、「交易廣場第三座:Three Exchange Square(32階建、1988年竣工)《 で構成されています。外壁には小豆色の花崗岩が使用され、窓にはハーフミラーガラスが使用されるなど、香港の典型的な現代建築のひとつでもあります。角が丸くなっているのが特徴ですが、その界隈では比較的低い建物で、あまり特異な形はしていない事もあり目立つ建物ではありません。また、後期に建てられた交易廣場三座は丸みが無く、四角い直方体のビルとなっています。

設計はパルマー&ターナー(Palmer&Turner)建築事務所です。この事務所は、以前取り上げた中国銀行大廈などの回で登場していますが、かつての中国大陸、特に上海などで活動範囲を広げていた戦前のアールデコ様式やネオ・バロック様式などを踏襲していた時代はもとより、戦後のモダニズム様式以降現在までの交易廣場のような現代的な建物も手掛け、主に香港をはじめシンガポール、バンコク、台北などアジア各地で数多くの建物を設計しています。香港では、怡和大厦(Jardine House)、灣仔の友邦大厦(AIA Building)などを設計しました。また、近年では中華人民共和国国内の設計も増えているようです。

交易廣場は完成当時、香港の中でも高さを誇るビルとして海岸沿いの埋立地に立地していましたが、更なる埋立てや開発で海からは遠ざかり、近隣のIFCなど林立する後発の超高層ビルの建設により、現在では周辺の建物に埋もれつつあります。ヴィクトリア湾からも段々見えにくくなっている交易廣場ですが、香港やアジア地域にとって重要な建物である事には今もって変わりありません。


【交易廣場:Exchange Square】

竣工年:1985年
高さ:188m(第一座及び第二座の最高地点)
階数:52階建(第一座及び第二座の最高階数)
用途:オフィス、下層部に公共サービススペース(路線バスターミナルとタクシーベイ)

1

交易廣場とOneIFC、背後に見える超高層ビルは中環中心。香港島の最も中心に位置する。

2

ハーフミラーガラスをふんだんに使用したデザインは現代的な印象だが、夏場の太陽が照りつける季節は眩しすぎるくらい!

3

壁面が円形になっているのは、お金を扱う場所だけにやはり風水や縁起を担ぐ意味もあるのだろうか?