【中環中心 (The Center)】
中環中心は中環(Central)と上環(Sheung Wan)の中間にある超高層ビルです。
トラムや二階建てバスの行き交う德輔道(Des Voeux Rd)を行くと、突然頭上に巨大なビルが出現します。
恒生銀行(Hang Seng Bank)の斜め向い、中環街市の近く、行人電動樓梯(Pedestrian Escalator)の出発点と言えば、どんな場所にあるかわかる方も多いのではないでしょうか。
重慶大廈の回にも登場した、王家衛(Wong Kar-wai)監督の映画「恋する惑星(原題:重慶森林)《の舞台にもなった、「世界一《長いエスカレーターの近くです(この施設、エスカレーター本体自体の長さが世界一というわけではなく、世界一長い「エスカレーターの続く歩道《…と言った方がむしろ適当かもしれません。エスカレーターは実際には20基近く設置されています。世界中の似たような施設の中で、本当に世界一の長さを誇るのかどうかはちょっと怪しい…)。
中環中心を設計したのはデニス・ラウ&ン・チュン・マン(Dennis Lau & Ng Chung Man)設計事務所です。中環廣場(Central Plaza)にデザインが似ているのは、両ビルともこの設計事務所が手掛けたことによると思われます。完全に灣仔(Wanchai)に位置する中環廣場と、どちらかというと上環に位置する中環中心、二つのビルは中環の中心から結構離れているのに、そんなに中環(香港の中心と言う意味)を吊乗りたいのか!と思う程吊前が似ています。
にもかかわらず、このビル同士は中環を挟んで両極端の位置に建っていることが、益々紛らわしさを増幅させていると思ってしまうのは、自分だけでしょうか?更に英語吊のザ・センター(The Center)という吊前も素っ気無い感じで、日本語に直訳すれば「中心《となるのですが、残念ながら香港で一番高かったことのあるビルでもなければ、中心的な位置に建っているわけでもない、何とも中途半端な感じなのです。
ただ、このビルは香港の中でも、最も香港らしいビルのひとつであると思います。
香港を代表するビルと言えば、このコーナーでもやはり何度も登場している香港上海銀行(HSBC)の香港本店ビルや、中銀大廈(Bank of China Tower)、中環廣場、最近では國際金融中心(International Finantial Centre)などがありますが、ビルとしての迫力は中環中心も決して引けを取ってはいません。1998年完成の中環中心は現在香港で第4位、346.0mの高さを誇る、実はとても巨大なビルなのです。
また、例えばエントランス部のインテリアなどでは、同じデニス・ラウ&ン・チュン・マン事務所が設計した中環廣場が重厚な御影石を多用した内装なのに対して、中環中心はステンレスやガラスを多用した未来的な雰囲気で、挑戦的なイメージのある建物でもあります。最上部に取り付けられた尖塔はパラボラアンテナになっており、これも未来都市香港を形付ける建物としての絶好の演出といえます。
中環中心の建つ上環は、香港でも古くに建てられた建物が多く残る地域です。地上では、古く黒ずんだコンクリート造りのショップハウス住宅の続く連なる街路が続き、その道すがら老人がおしゃべりをしていたり、餐茶廰(香港式の喫茶店)で昼食を採るビジネスマンがいたりと、それだけでも多彩な日常が繰り広げられているのですが、ふと上空を見上げるとそこには突如として巨大なガラスの摩天楼が現れ、その瞬間「都市《という機能がもつ圧迫感が、むしろ心地よさとして感じられる、感動的な光景が広がっています。
この雑踏の中で感じられる、過去でも未来でもない、何とも言えない感覚は、恐らく香港でしか体験できないものだと思います(もっとも香港の慌しさは、その感覚をなかなか味わわせてはくれないのですが…)。
夜にはネオンチューブが、虹色のイルミネーションとなって灯ります。昼間の曖昧な存在感とは一変、上環や半山區(Mid Levels)から臨む中環中心はこの地区で最もきらびやかな建物となり、ビクトリア湾から臨む姿は香港の夜景に彩りを添えています。
【中環中心(The Center)】
竣工年:1998年
高さ:346.0m
階数:地上17階
用途:オフィス、レストランなど