【曉盧 (Highcliff) & 御峰(The Summit)】
香港は、山と海にはさまれた狭い土地に作られた街です。
平坦な土地が少ない香港では、人々の活動範囲は、海岸沿いの平地から次第に山の中腹へ移るか、海に迫り出すかのどちらかになります。ヴィクトリア湾に面する香港島の中環や灣仔、九龍半島の湾に面している地域などでは埋立てが進み、もはや元の海岸線がどこにあるのか分からなくなっており、航路の変更などにより廃止を余儀なくされたフェリー路線も幾つかありました。
イギリスの統治が始まったことにより、近代的な街が形成されはじめた当初の香港では、平屋や二階建ての建物が主流でしたが、いつしかそれらは増築に増築を重ね、結果的に幾重にも重なる超高層ビルに変わっていったのは、ごく自然な流れなのでしょう。現在では世界でも屈指の超多層都市となった香港。人々が生活する住宅も勿論「超高層《です。日本でも建築基準法の改正などによって、近年超高層住宅が増えつつありますが、香港の住宅は日本のそれを、規模ではるかに凌駕しています。
香港で現在建設されている住宅は年々巨大化する傾向にあり、特に平坦で開発が容易な土地がまとまって確保できる新界やランタオ島などのニュータウンでは、同規格の40階〜60階建の建物を、横何百メートルにも渡って建設している様子が見られます。まるで壁の様に立ちはだかる無機的な光景は、ここに本当に人が住んでいるのかと疑いたくなる程ですが、一つ一つの窓に明かりが灯る夕刻になると、そこに生活があることを実感できます。
欧米人のように、密集して住まうという習慣があまりない人々がこの状況を目にしたら、おそらく初めは奇怪と思ったり、驚愕したりするのではないでしょうか。
ニュータウンだけではなく、もとから住宅地だった場所でもこの現象は顕著に見られます。
例えば香港島にある半山區(Mid Levels)や跑馬地 (Happy Valley)といった高級住宅街でも、最近では超高層住宅が主流になりつつあります。近年、山地の中腹や尾根に建設される超高層住宅も多く、もしかすると背後の山よりも高いのではないか? と思う建物もあります。
円筒形をした独特の形状は、やはり風水を意識しているのでしょうか?ハーフミラーガラスを使った鏡の様な壁面の多い香港のビルの中で、タイル貼りの建物は、どことなく温かさや安心感を与えている気もします。
跑馬地 にある、高さ252.4mの「曉盧 (Highcliff)《と、高さ219.8mの「御峰(The Summit)《は、そんな香港の住宅ビルの中でも突出した存在です。
吊前から想像出来るイメージの通りの高級アパートメントなのですが、その立地には驚かされるものがあります。
この建物は、香港島を南北に分ける峠「灣仔峡(Wanchai Gap)《の東、跑馬地側にあります。設計は劉榮廣伊振民建築事務所(Dennis Lau & Ng Chun Man Architects & Engineers)、建設は長江集團(Cheung Kong Group)と新鴻基地産(Sun Hung Kai Properties)によるものです。
山の中腹から巨大な二本の塔が突き出している様子は、灣仔の街中からも臨むことが出来ます。日本では、山腹に240mもの建築を建てること自体余り考えられないですよね。さらに曉盧は、香港で一番の高さを誇る住居でした。現在では西九龍のユニオンスクエアにある、高さ256.3mの「擎天半島 (The Sorrent)《や高さ255.0mの「君臨天下 (The Harbour Side)《に、その高さの座を奪われてしまったものの、建物は今なお周囲のランドマークとなっています。ビルの頂上にもやのかかった日などに灣仔の裾野から眺めると、まるで水墨画の様な光景が広がります。
【曉盧 (Highcliff)】
竣工年:2003年
高さ:252.4m
階数:地上73階建
用途:住居など
【御峰(The Summit)】
竣工年:2001年
高さ:219.8m
階数:地上65階建
用途:住居など