【国際金融中心(International Finance Centre)】
香港の超高層建築といえば、数ある建物のなかで、どれを思い浮かべますか?もう、数が多過ぎてどれにしていいかも迷ってしまう程ですが、やはり印象的なものは、香港上海銀行(HSBC)・香港本店ビルや、特異な形状の中国銀行・香港支店(Bank of China Tower)、それにセントラルプラザ(中環廣場)などの建物ではないでしょうか。
1997年7月の中華人民共和国への返還以来、一時はアジア通貨危機やSARSの影響があったものの、周辺のアジア諸国や中華人民共和国本土の好況を受けて、香港自身もめざましく復興、発展しています。昨今では、様々な都市計画や建築計画も着々と進められ、再開発事業も盛んに行われています。
この香港の返還と同じ頃、香港にとって、返還とは別の大きな出来事がありました。それは、香港国際空港の「移転」です。
1998年7月、香港国際空港は九龍半島の九龍灣地区から、ランタオ島沖のチェクラプコック島を造成して建設された人工島へ移りました。以前の空港は地名から『啓徳空港(KaiTak Airport)』とも呼ばれ、林立するビルの間を巨大な旅客機が大きなカーブを描いて離着陸する様は、世界的にも知られていた香港の名物でした。
しかし、アジアのハブ空港の役割を担っているにもかかわらず、滑走路が1本だけしかないという逼迫した容量や、周辺の長年に渡る騒音問題、市街地を通過しての離着陸など多くの問題を抱えていた事で、当時香港を統治していたイギリスのクリストファー・パッテン総督により、移転が決定されました。
この空港建設に伴って、市内では様々な開発計画が行われました。主なものは、空港専用列車や高速道路、ニュータウン、業務中心地の建設などです。特に後の機場快線となる空港専用列車や業務中心地の建設は壮大な計画で、機場快線の九龍側にある施設『ユニオンスクエア』では現在でも建設が進められています。
この中でも国際金融中心(International Finance Centre、以下IFC)は香港の中心地、中環(Central)に新たな業務拠点を建設すると言う目論見で建設が進められました。機場快線の終点、香港駅上に高さ400mを超える超高層ビルが建設されたのをはじめ、空港のチェックイン施設やホテル、ショッピングモール、映画館など様々な施設が、1997年から2005年まで足掛け8年に渡って建設されました。
建物はアルゼンチン出身のアメリカ人建築家、シーザー・ぺリ(Cesar Pelli)によって設計されました。
大まかには5つの施設から構成され、1999年に建てられた国際金融中心・第一期(One IFC:210m)と国際金融中心・第二期(Two IFC:415.8m)、フォーシーズンズホテル香港(Four Seasons Hotel Hong Kong:205m)は付近のランドマークとなっています。
高さが415.8mもあるTwo IFCは、それまで香港で最も高かった灣仔のセントラルプラザを抜き、現在世界で第5位、そして香港の中で最も高いビルとなりました。この建物は、建設場所、デザイン、高さ共に全ての面において、香港で最も優れているものの一つといえるでしょう。
Two IFCは中環に造成された埋立地の突端に立ち、「塔」の様に独立した様は付近のランドマークとしてはこの上無い効果をもたらしています。ヴィクトリア湾を挟んで九龍側から最も目立つ建物で、香港のイメージを変えてしまったのではないでしょうか。その高さゆえ、本来なら圧迫感を与えがちな超高層ビルですが、Two IFCは上方へ向かうにつれて徐々に狭まるデザインとなっている事で、直下からの見上げでもそれほど強烈な圧迫感はありません。
また、最上部には櫛状の飾りが付いていて(この装飾はOne IFCにも付いています)、まるで建物が空に向かって融けてしまって行くかの様です。設計者のシーザー・ペリは、東京のモダニズム建築であるアメリカ合衆国大使館をはじめ、ニューヨークのポストモダニズム建築であるインターナショナル・フィナンシャル・センターなどを設計しています。この飾りも、かつてのポストモダニズム建築の名残のような印象がありますが、建物全体に優雅さをもたらす上では、実に効果的な役割を果たしていると言えるでしょう。
このビルが最も美しいのは夕刻です。One IFCとTwo IFCからは、共に上空に向かって照明が放たれており、ヴィクトリア湾や九龍から臨んだIFCは、まるで光の塔のようです。特に尖沙咀のフェリーターミナルから見るこの光景、その人工美に感動さえ覚えます。
【国際金融中心】
《機場快線/東涌線・香港駅》
竣工年:1998年
用途:駅舎、空港チェックイン施設、タクシーベイなど
《IFCモール》
竣工年:2003年
用途:ショッピングモール
《国際金融中心・第一期》
竣工年:1999年
高さ:210.0m
階数:地上38階建、地下4階建
用途:オフィス、バスターミナル
《国際金融中心・第二期》
竣工年:2003年
高さ:415.8m
階数:地上88階建、地下6階建
用途:オフィス
《フォーシーズンズホテル香港》
竣工年:2005年
高さ:205.1m(最上部)
階数:地上55階建(最高階)
用途:ホテル、コンドミニアム、住居
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