【中銀大廈:Bank of China Tower】
中銀大廈は、中華人民共和国(以下中国)国内の資本による銀行である、中国銀行(Bank of China)の香港分行として使われている建物です。中国銀行の本店は北京にあり、国内規模第二位の市中銀行です。香港や中国本土で『中国銀行集團』と言う企業体を形成する大手銀行グループとなっています。
香港の中環(Central)と金鐘(Admiralty)の中間に位置するこの建物は、中国系アメリカ人建築家のイオ・ミン・ペイ(I ・M Pei)氏が設計しました。ペイの代表作としてはこの中国銀行香港分行の他に、シンガポール初の超高層建築である華僑銀行(Overseas Chinese Banking Corp)本店ビルや、パリのルーヴル美術館エントランスにあるクリスタルピラミッド(Grand Louvre)、アメリカ合衆国ボストンのジョン・ハンコックタワー(Jhon Hancock Tower)、日本では滋賀県甲賀市にある美術館施設のミホ・ミュージアム(Miho Museum)等があります。
また、ペイは2005年3月に亡くなられた丹下健三氏と共に、アジアを代表する建築家として名を挙げられる大巨匠として知られています。
地元では『中銀大廈』の他、英名の略称から『BOC Tower』と呼ばれる事もあります。三角形を積み重ねた様な幾何学的なデザインが特徴的で、香港を代表するビルのひとつです。外観は、かつてよく使われた『近未来』と言う言葉を髣髴とさせる印象です。壁面窓の幾何学的な模様パターンの繰り返しは、どことなく大量生産と大量消費の最盛期であった90年代を感じさせる様でもあります。
(この幾何学イメージのパターンは東京の西新宿に建設された、丹下健三氏設計の東京都庁舎にも見られるものです。こちらの壁面意匠は、障子と電子回路と言われています。折しも、新都庁舎が完成したのも、香港の中国銀行が完成した翌年である1991年の事です。)
この中銀大廈の完成で、欧米から見られる香港のイメージも、80年代から90年代にかけて、中国(共産圏)への玄関口、或いはアジアの一貿易都市から、東京と並んでテクノロジーが過度に発達する『未来都市』と言う位置付けへと変わって行くきっかけともなった気がします。
また、80年代後半から90年代前半に流行した、「サイバーパンク(テクノロジーが高度で過剰に発達している社会を舞台に、そのパラドックスを描いているSF作品)」と言われる漫画やアニメーションでは、多くの作品でアジア、特に東京と香港のアマルガムなイメージが引用されています。その代表格で、欧米でのジャパニメーションブームを起こすきっかけともなった士郎正宗氏原作のコミック『攻殻機動隊(Ghost in the Shell)』の冒頭部でも、この中国銀行香港分行に似た建築が登場しています。そう言った意味でも、香港にとってこの建物は、エポックメイキングな建築とも言えるのかも知れません。
しかし、当のペイはこの建物へ竹とその幹と言うイメージを持たせ、急速に成長する香港を象徴するビルにしたいと言う意味合いを込めたそうです。竹はアジアの象徴的な植物のひとつでもあり、建物に中国的な雰囲気を持たせたいとの事で設計したそうです。
香港ドルの紙幣発行銀行の一つである中国銀行は、自社発行の紙幣にこの建物
を描いています。一説には建設当時、クライアントの中国銀行は中華人民共和国政府系の銀行であった(現在では株式を公開し民間銀行となっている)為、この建物の鋭部を植民地の象徴でありライバルである香港上海銀行(HSBC)や、旧イギリス香港総督府(現:香港立法会議事堂)へ向け、運気を悪くする狙いがある…と言った香港特有の噂もありました。しかし、ペイはこの建物には風水的な意味合いは含まれていないとコメントしています。
竣工後、一時はアジアで一番の高さを誇りましたが、2年後に同じ香港の灣仔(Wan Chai)に建てられたセントラルプラザ(中環廣場)に抜かれてしまいました。
※香港にある中国銀行(中国本土の中国銀行とは別法人)は中国名『中國銀行(香港)』、英語名『Bank of China (Hong Kong)』と書かれます。
【中銀大廈】
竣工年:1990年
高さ:367.4m(尖塔含む、ビル本体は305m)
階数:地上72階建、地下4階建
用途:オフィスに使用
構造:SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)構造
URL:http://www.bochk.com/web/home/home.xml