【怡和大廈 : Jardine House】
先ず思い浮かべる香港の風景と言えば、何と言っても超高層ビルの林立するビクトリア湾の風景でしょう。例え香港に興味に無い人でも、一度位は目にした憶えがあると思います。
今でこそ香港島北部の海岸沿いに竹の子の如く『生えている』超高層ビル群ですが、ここまでになったのもつい30年程以前からの事です。
それまでは、東南アジアの植民地に多く見られる『ショップハウス』と言う建築様式が主流で、1960年代位まではショップハウスの形式を受け継いだ中層程度のコンクリート建築が主でした(これらの建物は増改築を繰り返し、現在では十数階建てもある香港特有の建物に仕上がっています)。
その中で1973年、香港の政治と経済の中心地である中環(Central)地区に172mの超高層ビルである「怡和大廈(Jardine House)」が完成します。今でこそ周囲の建物に埋もれてしまった感のある怡和大廈ですが、当時は周囲よりはるかに抜きん出て高く、ランドマークとして君臨。更に夜間ライトアップも行われ、建物下部から空へライトが照射。光の柱の様な演出が施されていました(この照明方法はIFCでも現在使われています……こう言う感じ、香港の人は好きなんでしょうか?)。
怡和大廈は、超高層ビルのデザインとしては珍しく、丸窓が使われている事も非常にインパクトを与えています。
1980年代、灣仔(Wanchai)に合和中心(Hopewell Centre)や新鴻基中心(San Hung Kai Centre)などの200m超のビルが出来るまで、香港で最も高く聳えていました。
設計は、パルマー・アンド・ターナー設計事務所です。この事務所は、戦前に上海や広州でも建物を設計した事で知られています。
怡和大廈が完成した頃は、まだ香港上海銀行(HSBC)はバロック風、中国銀行・香港分行はアールデコ風の旧社屋で営業をしていました(香港上海銀行の旧社屋は、新社屋建設の為に取り壊されました)。
当時、活気を呈しながらも異国情緒が香る、アジアの港町出現したに近未来を予感させる超高層ビルの姿は、きっと斬新だったに違いありません。
この流れは、後のハイテクビルと呼ばれたノーマン・フォスター卿設計の香港上海銀行本店や、イオ・ミン・ペイ設計の中銀大廈(Bank of China Tower)へと受け継がれて行く事になります。
余談ですが、「ジャーディン」と聞いてピン!ときた方もいるかも知れません。
怡和大廈の英語名である「Jardine」とは、阿片戦争に深く介入したと言われるイギリスの商社、「ジャーディン・マセソン商会」の事です。
ジャーディン・マセソン社は、現在も香港を拠点として、世界でも最大規模の商社グループとして活動しています。香港は、前史の舞台となった土地柄、様々な場所で歴史的な名前を聞く事は珍しくありません。
【怡和大廈 : Jardine House】
建設年:1973年
高さ:179m
階数:52階建
設計:パルマー・アンド・ターナー建築事務所(P&T Architects & Engineers )
用途:オフィス、ショッピングモール