ヘンリー・チューの作品のコンセプトは、シンプルで明快、かつとてもユニーク。日常の中にあるできごとを、まったく別の目線でヴァーチャルな世界へと変換させた彼の作品は、スマートでどことなく品がありながら、同時にどんな人でも簡単にその世界を体験できる親しみやすさもまた魅力です。インタビューでは、そのユニークなアイディアの背景にある知的で明快な考え方を知ることができました。彼のインタラクティブ・アートは、わたしたちの日常生活の中にある問題を解決する新たな視点とコミュニケーションを提示してくれます。
1. 最近の活動について聞かせてください。その作品に対する人々の反応はいかがでしたか?
最新作 「The Moving Mao(動く毛沢東)」は、もともと「The Moving Canvas(動くキャンバス)」と呼ばれるものでした。常々、簡単な言葉を身体で描き、その身体の動き(ジェスチャー)を、ビジュアルに翻訳するインタラクティブ・プラットフォームを作りたいと考えています。それがより直接的で表情に富んだものになると思ったからです。
この作品ではウェブカムを使って動きをとらえ、プログラミング・プラットフォームであるプロセッシングを使用して、ソフトウェアを動きに反応させています。最近は、作品で「空気中に浮かぶキャンバスを想定し、ジェスチャーでそれを操る」というアプローチをとっているのですが、「The Moving Canvas」と呼んだのも、そこから来ています。
多くの人がこの作品のビジュアルとその動きを高く評価してくれました。みんな、作品に毛沢東のポートレートを使ったことに興味を持っていました。彼らがどう感じたのかということを、もっと知りたいですね。
2. 自分でデザイン作品を製作し始めたのはいつ頃からですか? 一番初めに製作した作品はどんなものでしたか?
中学生の頃、よく絵を描いていたのですが、大学に入り、コンピュータを使って絵を描くことを学びました(アートやデザインのコースを取ってはいなかったのですが)。2000年に初めて自分のウェブサイトを立ち上げました。使ったのはFlash4とDirector6です。
3. 大学では電気工学を専攻されていましたが、その後どうやってデザインの仕事を始めたのですか? 自分自身のメディアとしてインタラクティブ・メディア・アートを選んだのは、なぜですか?
(留学先のニュージーランドから)香港に戻り、最初はプログラマーとして働き、会社のウェブサイトを作るチャンスを手に入れようとがんばっていました。次に、デザインとプログラミング両方の技術が必要になる、ソフトウェア開発の仕事を経て、ウェブデザインの会社に入社し、デザイナーとしてのキャリアをスタートさせました。
インタラクティブ・メディアを選んだのは、自分の興味とコンピュータの知識の両方を併せ持っていたからです。インタラクティブな作品を作るのは、おもちゃをつくるようなものです。自分で創作したもので遊び、改良して、また試してみる。すごく楽しい作業です。
4. 最新作「The Moving Mao」について聞かせて下さい。この作品のテーマはどのようなものですか? 作品を展示する場所としてカフェを選んだのは、何か特別な理由があったのでしょうか。
このプロジェクトは、展示会場となったēpöch café(エポック・カフェ) が、そもそもお店の中で見ることができる映像作品が欲しいということでVideotageに問い合わせ、そこで単純な映像作品ではなくインタラクティブなインスタレーションをしてはどうかという提案があり、実現したものです。Videotageのレジデント・アーティストとして、僕がこのプロジェクト用に新作を製作することになりました。
今年は中国への返還10周年の年ですが、香港には、中国に対して複雑な思いを抱いている人々がまだたくさんいます。エンターテインメントがあり、チャンスがある場所であるとともに、犯罪と農薬漬けの食べ物の街でもあります。中国に対する嫌悪感もありながら、同時に愛着もある。そのあいまいな気持ちが、作品の中のゆがんでぼやけた毛沢東の肖像に反映されています。
5. 12th ifva awardsでの金賞受賞おめでとうございます! 株価情報を音楽に変換するというアイディアは、他にはない、とてもおもしろい発想ですね。どうやってこのアイデアを思いついたのですか? この作品について、特に大変だったことはありますか?
ありがとうございます。香港には、有益無益に関わらずたくさんの情報があふれています。僕はいつも、自分の身の回りの情報を、何か別の形に翻訳するチャンスを探していました。実はこの作品のアイデアは2年前からあり、プロトタイプを作っていたのですが、昨年ifvaのために作品を再構築し、製作しました。レトロなデザインのキーパッドが予想外にレアなものだったので、探すのに苦労しました。
6. 「株価情報を音楽に変換する」(The Sound of Market)、「ジェスチャーを使うのは、筆で絵を描くよりも簡単」(The Moving Mao)など、作品のベースにあるアイディアが、とても知的でユニークですが、同時に、多くの人が取っ付きやすい、身近に感じられるテーマだと思います。こういった作品のアイディアは、いつもどうやって浮かんでくるものですか?
また、普段、どんな物事や瞬間にインスピレーションを受けますか? 何か最近インスピレーションを受けたものやできごとがあれば教えて下さい。
アイデアはいつも自分の身の回りのこと、世の中の現象から浮かんできます。たまに、まったくのファンタジーやくだらない話からアイデアを得ることもあります。コンピュータを使いながら、自分の知識でそのアイデアを再現して広げていき、人々が体験できる何かを作り上げていきます。最近では、世論調査で香港人共通の問題だと言われるストレスと睡眠の問題を題材にして作品を作りたいと考えています。
7. 作品を通じて、見てくれた人にどんなことを伝えたいですか?
普段は個人的な感情を作品で表現することはありません。 現実世界の現象とヴァーチャルなコンピュータ空間でのプロジェクトをひねり合わせているだけです。観客に、既成ではない新しいものの見方を提示して、それについての感想は観客にゆだねたいと思っています。
8. 好きなアーティストは誰ですか?
注目している作品は本当にたくさんあり過ぎるのですが、音楽と双方向性とを融合させている岩井俊雄氏(メディア・アーティスト)のインタラクティブ・ワークが好きです。
9. 自分の作品の中で、特に気に入っているもの、印象に残っているものを一つ教えてください。
「The Moving Mao」では、とても良い結果が残せたと思います。ウェブカム・ベースの作品は、反応が遅くなってしまいがちで、処理能力が高いコンピュータが必要になるのですが、この作品は、標準性能のコンピュータでもとてもスムーズに動いていました。
10. 現在の香港のクリエイティブ・シーンについて、他の国と比較してどのように感じますか? 自分はどのように関わっていきたいと思いますか?
多くの若いアーティストやデザイナーが認知されるようになってきて、以前よりよくなってきていると思いますが、それでも香港でアートやデザインを仕事にして生活していくのはまだまだ大変です。クリエイティブ・シーンがそれだけドライだということなのかもしれません。他の国と比べると、香港ではすばらしい仕事をすれば、注目されるようになるのは簡単だと思います。
自分自身としては、新しい作品を作り続けていくつもりです。
11. これからどんな作品を作っていきたいですか? 次の作品のプランなどあれば教えてください。
「The Moving Mao」で使ったアプローチは、たくさんの可能性を秘めています。同じビジュアル操作の方法を用いた作品のアイディアが1、2個あります。両方ともウェブカムとプロジェクションをベースにしたものです。
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| The Moving Mao |
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| Forgotten War |
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| Happy Pylones |
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| The Taste of Love |
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| The Sound of Market |
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| Video Brush |
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| TV Clock |
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