壁一面を埋め尽くす鮮やかでエレガントな模様。近づいてよく見ると、その模様はすべて細かい文字(中にはえっ?と思うような卑猥な言葉やスラングも!)の集合で描かれています。さまざまな空間を文字で埋め尽くすこのインスタレーション作品を次々と発表しているTsang Kin Wah。昨年末、東京で行われたエキシビション会場でお会いした彼は、まじめで穏やかな人柄が伺える、丁寧な話しかたがとても印象的でした。東京の印象なども交えつつ、自身の創作活動についてインタビューに応じて頂きました。
1. 最近の創作活動について教えてください。
作品に対する香港の人たちの反応はいかがですか?
最近では、これまでのパターンとは少し違った、2つのインスタレーション展示を行いました。あまりデコラティブではなく、一見すると何も見えないようなものなのですが、私たちが日常生活のなかで、どのように(ものを)見て、眺めて、読んでいるか、何を見逃したり、無視したりしているかということが一つの主なテーマになっています。
直接感想を言ってくれた人はあまりいないので、香港の人たちがどう感じたのかはよくわからないのですが、これは空間と文字との新しい関わり方で、これまでの私の作品とは違ったアプローチだと感じたという友人がいました。
2. 創作活動を始めたのはいつからですか?
どのようにアーティストとして活動を始めたのでしょうか。
本格的に作品を作り始めたのは、大学生の頃です。2年間ファインアートを学んだ後、アートや社会、自分自身に対する自分の考えを反映できる何かを作ろうと思いました。いくつかの作品製作を経験した後、文字やカリグラフィーといった要素を使い始めました。
当時、クラスメートの多くは作品を作り始め、何か他とは違った作品の見せ方を探っていました。そんななかで、私たちは自分達でキュレーションをした展示をやり始めました。もちろん卒業まで続けなかった人たちもいましたが、私はその後もいろいろな形での展示を続けていきました。私のキャリアはその頃、大学3年生のころから始まっていると思います。
3. 多くの字を用いた作品はユニークでダイナミック、かつコンセプチュアルな印象があります。文字を使ったインスタレーションというアイデアはどのようにして思いついたのですか?
もともと、木版画や石彫、特に書道などの伝統的なものが好きで、小学校の頃、少なくとも週に一回は書道の作品を書いて先生に提出しなくてはいけなかったことを覚えています。それは自分たちの文化を学ぶのに本当に良い機会で、筆の使い方や筆致、墨や文字にとても興味をそそられました。のちに大学で、さらに勉強する機会があったので、あらゆるスタイルの書道を学び、本当によく練習しました。
自分でもそこまで興味があったとは思っていなかったのですが、自分の製作を始めてから、文字が自分の感情や考えを表現するのに良い材料になりそうだと、ある時思ったのです。そして、文字とイメージを通して異なるテーマや物語を伝えようと思いました。その頃、木版画や石彫など伝統的な方法にもインスピレーションを受けていましたが、私の作品は2次元的なもので、空間や環境という要素を取り入れることはほとんどありませんでした。
その後、空間や、作品と空間、鑑賞者との関係性に魅力を感じ、いくつか作品を製作してみました。ロンドン留学後、最終的に空間を取り入れた作品製作という方法にたどりつき、インスタレーション制作を始めました。
4. 日常生活の中で、インスピレーションの源となるのは例えばどんなイベントや物事、あるいは瞬間ですか? 作品について何かアイデアが浮かんだとき、そのアイデアをどのように具体的な作品の形にしていきますか?
自分の日常生活、出会った人々や自分のまわりで起こったできごとはすべて、インスピレーションの源になると思います。これは、2002年から2003年にかけてロンドンに留学していた頃を思うと特にはっきりしています。ロンドンではストレスばかりの最悪な日々を送っていました。その体験を通して感じたこと、つまり「インスピレーション」はそのまま自分の作品の内容に現れていました。でも、今思い返してみると、その時期の経験によって私は大きく変わり、自分の心を開き、インスタレーション作品を作り始めるよいきっかけになったと思います。
約一年間の滞在中に、文字とイメージ、性別と悪口などの「汚い」言葉の関係などについてリサーチをしました。私はウィリアム・モリスのパターンを選び、文字と色についての研究をしました。チューターがいいアドバイスをくれたこともあり、卒業制作では、シンプルな色を使った壁紙のようなものを作り、その「壁紙」でスタジオの壁一面を覆って明るく楽しげな空間を作り上げました。
5. 昨年末には東京でエキシビションが開かれました。東京での初のエキシビションはいかがでしたか?(「ショーケース」:2006/12/12〜16、Art-U room)香港と比べて、何か特別な印象や、人々の反応の違いなど感じたことはありましたか?
すばらしい経験でした。期間は短かったですが、本当に楽しかったです。ギャラリーのオーナー、澤井清行さんはオープンマインドな方で、とても協力的でした。インスタレーションにもとても満足しましたし、また違った作品の可能性を感じることができたように思います。
人々の反応については、コンテンポラリーアートが好きな人やコンテンポラリーアートのギャラリーを訪れる人があまり多くないという点では、もしかしたら日本も香港も同じかもしれません。でも一つはっきり違うと思ったのは、日本のギャラリーで出会った人たちは本当に作品を楽しみにしていて、作品をよく鑑賞し、アーティストに敬意を払っているように見えたことです。これはあくまでも私が東京に滞在したわずかな期間で感じたことですが。
6. 東京では、現代音楽のコンサートのステージ美術も手がけられていました(「チェンバロ+パーカッション」:2006/12/17、東京文化会館)。音楽やダンスなど、他のジャンルのアーティストとの作業についてどう思いますか?自分自身で、他のメディアを使った創作活動をすることにも興味がありますか?
いつもは一人で製作していて、他のアーティストやミュージシャンなどと一緒に何かを作ったことがなかったので、まったく新しい経験でした。他の人との共同作業について学ばなくてはいけなかったし、時には自分のアイデアが全体を支配してしまわないように調整したり、制約されたりすることもありました。実際簡単ではありませんでしたが、とても楽しかったです。
音楽は好きで、以前まだあまり忙しくなかった頃は自分で音楽を作りたいと思っていました。いつか自分の音楽を作ることができたらいいなと思います。
7. 作品を通じて、観客にどんなことを伝えたいですか?
社会や規律、信条などによって拒否されたり否定されてしまった、物事の別の面を観客に見せたいと思っています。私たちの周囲にはいろんなことが起こりますが、そのまま忘れたり見逃したりすることも時々あります。物事には「絶対」があると信じている人や、それについて考えたこともない人もいると思いますが、私はどんなことでも「絶対」はありえないと思っています。そういう考え方を観客に伝えたいと思っています。
8. 自分の作品の中で、特に気に入っているもの、印象に残っているものはありますか?
"Untitled - Hong Kong" でしょうか。これまでの自分の展示の中でもたぶん一番大きなインスタレーションで、自分にとってとても印象深い作品です。またこれは、中国本土から移住してきて香港で生活している「移民」としてのアイデンティティを失くしつつある私自身の感情についての作品でもあります。
9. 好きなアーティストは誰ですか?
カート・コヴァーン(ニルバーナ)です。
10. 現在の香港のクリエイティブ・シーンをどう思いますか?自分はどのように関わっていきたいと思いますか?
アートスペースやエキシビションは以前より増えてきましたが、個人的には、香港のアートシーンは少し退屈で、あまり大きな変化はないように思います。おもしろそうなエキシビションもそう多くはなく、何よりも、ほとんどの香港の人たちがアートにあまり関心がないことに、いつもがっかりさせられます。
香港でもおもしろそうなプロジェクトがあれば関わりたいと思いますが、これからは、できれば別の場所に焦点を合わせていくことも考えています。
11. これからどんな作品を作っていきたいですか? 次の作品のプランなどあれば教えてください。
将来的には、音楽や映像、もしくは文学など、別の分野の創作にもチャレンジして、それらを組み合わせて何か違った種類の作品を生み出す可能性を探ってみたいと思っています。今のところはまだ難しそうですが。
次回作は、東京でのインスタレーションを通して発見したことをさらに追求し、照明や色、時間の流れを通じての感情の変化によって、空間の性質・本質をさらに追求し、異なる文字と内容を使って、その関係性をさらに深く研究してみたいと思います。
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| Chinese! It's Chinese |
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Dragon/Jormungand/Serpent/ Imperiality/Devil/Chinese/ Norwegian/Satan/God/ Overman… |
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| Untitled - Hong Kong |
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